看取り介護加算

1.内容

医師が回復の見込がないと判断した利用者に対して、利用者や家族の意思を尊重して、医師、看護師、介護職員が連携して看取りをする場合に算定する。

 

2.単位数(短期利用を除く)

(報酬基準(厚労告126号)

認知症対応型共同生活介護費を算定する場合について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして市町村長に届け出た指定認知症対応型共同生活介護事業所において、別に厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者については、看取り介護加算として、死亡日以前31日以上45日以下については1日につき72単位を、死亡日以前4日以上30日以下については1日につき144単位を、死亡日の前日及び前々日については1日につき680単位を、死亡日については1日につき1,280単位を死亡月に加算する。ただし、退居した日の翌日から死亡日までの間又は、医療連携体制加算を算定していない場合は、算定しない。

 

 

3.算定要件

(施設基準)

●看取り指針を定め、入居の際に、利用者等に対して内容を説明し、同意を得る

●医師、看護職員、介護職員、介護支援専門員等による協議の上、看取りの実績等を踏まえ、看取り指針の見直しを実施

●看取りに関する職員研修の実施

(利用者基準)

●医師が医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者

●医師、看護職員、介護支援専門員等が共同で作成した介護計画について説明を受け、その計画に同意している者

●看取り指針に基づき、介護記録等の活用による説明を受け、同意した上で介護を受けている者

(その他の基準)

●医療連携体制加算を算定していること

●「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行うこと(令和3年度介護報酬改定で追加)

 

4.報酬基準解釈通知

① 看取り介護加算は、医師が、一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した 利用者について、その旨を利用者又はその家族等(以下「利用者等」という。)に対して説明し、その後の 療養及び介護に関する方針についての合意を得た場合において、医師、看護職員、介護職員、介護支援 専門員等が共同して、随時、利用者等に対して十分な説明を行い、療養及び介護に関する合意を得なが ら、利用者がその人らしく生き、その人らしい最期が迎えられるよう支援することを主眼として設けたものである。

② 利用者等告示第40号ロに定める看護職員については、認知症対応型共同生活介護事業所において利 用者の看取り介護を行う場合、利用者の状態に応じて随時の対応が必要であることから、当該認知症対 応型共同生活介護事業所と密接な連携を確保できる範囲内の距離にある病院、診療所若しくは訪問看 護ステーション(以下「訪問看護ステーション等」という。)の職員に限るとしているところである。具体的には、 当該認知症対応型共同生活介護事業所と訪問看護ステーション等が、同一市町村内に所在している又 は同一市町村内に所在していないとしても、自動車等による移動に要する時間がおおむね20分以内の距 離に所在するなど、実体として必要な連携をとることができることが必要である。

③ 認知症対応型共同生活介護事業所は、利用者に提供する看取り介護の質を常に向上させていくためにも、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクル(PDCAサイクル)により、看取り介護を実施する体制を構築するとともに、それを強化していくことが重要であり、具体的には次のような取組が求められる。

イ 看取りに関する指針を定めることで事業所の看取りに対する方針等を明らかにする(Plan)。

ロ 看取り介護の実施に当たっては、当該利用者に係る医師の診断を前提にして、介護に係る計画に基づいて、利用者がその人らしく生き、その人らしい最期が迎えられるよう支援を行う(Do)。

ハ 多職種が参加するケアカンファレンス等を通じて、実施した看取り介護の検証や、職員の精神的負担の把握及びそれに対する支援を行う(Check)。

二 看取りに関する指針の内容その他看取り介護の実施体制について、適宜、適切な見直しを行う(Action)。

なお、認知症対応型共同生活介護事業所は、看取り介護の改善のために、適宜、家族等に対する看取り介護に関する報告会並びに利用者等及び地域住民との意見交換による地域への啓発活動を行うことが望ましい。

④ 質の高い看取り介護を実施するためには、多職種連携により、利用者等に対し、十分な説明を行い、理 解を得るよう努力することが不可欠である。具体的には、認知症対応型共同生活介護事業所は、看取り 介護を実施するに当たり、終末期にたどる経過、事業所等において看取りに際して行いうる医療行為の選択 肢、医師や医療機関との連携体制などについて、利用者等の理解が得られるよう継続的な説明に努めるこ とが重要である。加えて、説明の際には、利用者等の理解を助けるため、利用者に関する記録を活用した説 明資料を作成し、その写しを提供すること。

⑤ 看取り介護の実施に当たっては、管理者を中心として、看護職員、介護職員、介護支援専門員等による 協議の上、看取りに関する指針が定められていることが必要であり、同指針に盛り込むべき項目としては、例 えば、以下の事項が考えられる。

イ 当該事業所の看取りに関する考え方

ロ 終末期にたどる経過(時期、プロセスごと)とそれに応じた介護の考え方

ハ 事業所において看取りに際して行いうる医療行為の選択肢

二 医師や医療機関との連携体制(夜間及び緊急時の対応を含む)

ホ 利用者等への情報提供及び意思確認の方法

へ 利用者等への情報提供に供する資料及び同意書の書式

ト 家族等への心理的支援に関する考え方

チ その他看取り介護を受ける利用者に対して事業所の職員が取るべき具体的な対応の方法

⑥ 看取りに関する指針に盛り込むべき内容を、施設基準第34 号イ?に規定する重度化した場合の対応に 係る指針に記載する場合は、その記載をもって看取りに関する指針の作成に代えることができるものとする。 また、重度化した場合の対応に係る指針をもって看取りに関する指針として扱う場合は、適宜見直しを行う こと。

⑦ 看取り介護の実施に当たっては、次に掲げる事項を介護記録等に記録するとともに、多職種連携を図るた め、医師、看護職員、介護職員、介護支援専門員等による適切な情報共有に努めること。

イ 終末期の身体症状の変化及びこれに対する介護等についての記録

ロ 療養や死別に関する利用者及び家族の精神的な状態の変化及びこれに対するケアについての記 録

ハ 看取り介護の各プロセスにおいて把握した利用者等の意向と、それに基づくアセスメント及び対応についての記録

⑧ 利用者等に対する随時の説明に係る同意については、口頭で同意を得た場合は、介護記録にその説明 日時、内容等を記載するとともに、同意を得た旨を記載しておくことが必要である。 また、利用者が十分に判断をできる状態になく、かつ、家族の来訪が見込まれないような場合も、医師、 看護職員、介護職員等が利用者の状態等に応じて随時、利用者に対する看取り介護について相談し、共 同して看取り介護を行っていると認められる場合には、看取り介護加算の算定は可能である。 この場合には、適切な看取り介護が行われていることが担保されるよう、介護記録に職員間の相談日時、 内容等を記載するとともに、利用者の状態や、家族と連絡を取ったにもかかわらず事業所への来訪がなかっ た旨を記載しておくことが必要である。

なお、家族が利用者の看取りについて共に考えることは極めて重要であり、事業所は、連絡を取ったにもか かわらず来訪がなかったとしても、継続的に連絡を取り続け、可能な限り家族の意思を確認しながら介護を 進めていくことが重要である。

⑨ 看取り介護加算は、利用者等告示第40号に定める基準に適合する看取り介護を受けた利用者が死亡 した場合に、死亡日を含めて30日を上限として、認知症対応型共同生活介護事業所において行った看取 り介護を評価するものである。

死亡日前に自宅へ戻ったり、医療機関へ入院したりした後、自宅や入院先で死亡した場合であっても算 定可能であるが、その際には、当該認知症対応型共同生活介護事業所において看取り介護を直接行って いない退居した日の翌日から死亡日までの間は、算定することができない。(したがって、退居した日の翌日 から死亡日までの期間が45日以上あった場合には、看取り介護加算を算定することはできない。)なお、看 取り介護に係る計画の作成及び看取り介護の実施にあたっては、厚生労働省「人生の最終段階における 医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等を参考にしつつ、本人の意思を尊重した医療・ケアの方針 が実施できるよう、多職種が連携し、本人及びその家族と必要な情報の共有等に努めること。

⑩ 認知症対応型共同生活介護事業所を退居等した月と死亡した月が異なる場合でも算定可能であるが、 看取り介護加算は死亡月にまとめて算定することから、利用者側にとっては、事業所に入居していない月に ついても自己負担を請求されることになるため、利用者が退居等する際、退居等の翌月に亡くなった場合に、 前月分の看取り介護加算に係る一部負担の請求を行う場合があることを説明し、文書にて同意を得ておく ことが必要である。

⑪ 認知症対応型共同生活介護事業所は、退居等の後も、継続して利用者の家族への指導や医療機関に 対する情報提供等を行うことが必要であり、利用者の家族、入院先の医療機関等との継続的な関わりの中 で、利用者の死亡を確認することができる。 なお、情報の共有を円滑に行う観点から、事業所が入院する医療機関等に利用者の状態を尋ねたときに、 当該医療機関等が事業所に対して本人の状態を伝えることについて、退居等の際、利用者等に対して説 明をし、文書にて同意を得ておくことが必要である。

⑫ 利用者が入退院をし、又は外泊した場合であって、当該入院又は外泊期間が死亡日以前45日の範囲 内であれば、当該入院又は外泊期間を除いた期間について、看取り介護加算の算定が可能である。

⑬ 入院若しくは外泊又は退居の当日について看取り介護加算を算定できるかどうかは、当該日に所定単位 数を算定するかどうかによる。

⑭ 家庭的な環境と地域住民との交流の下で、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及 び機能訓練を行うことにより、利用者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにす るという認知症対応型共同生活介護の事業の性質に鑑み、1月に2人以上が看取り介護加算を算定す ることが常態化することは、望ましくないものであること。